お疲れ様です。
元大手の派遣会社で法務担当していました新一です。
「法務」という部署は、字の通りですが、法律に関する業務(例えば、派遣先との契約書のチェックとか、派遣社員さんからが派遣先で困っているときに営業と連携して派遣先に相談するとかをする部署)です。
また、「元」というのは、2019年の4月で派遣会社を退職して、IT企業のベンチャー企業(職種は法務のままです)に転職したためです。
おかげさまで、派遣先の立場で派遣社員の方と関われる回数が増えました。うちの部署にも派遣社員の方はいらっしゃいます。
また、派遣会社の社員だったときより書ける記事の内容が増えました。
もともと働き方については常に考えていたので、これからもどんどんお役に立てる記事を書いていきたいと思います。
さて、今日は前々から書きたかった派遣社員の「面接(「面談」と言っている方もいます)」について書いていきます。
まず、目次を作ったので、読みたいところから読んでください。
■目次
1.派遣社員の「面接(面談)」とは何か?
ほとんどの方はご存知かと思いますが、派遣会社にお仕事を紹介してもらうときに、
「職場見学に進んでください」
とか、
「職場見学をしますか?」
とか、
「職場見学はいつがご都合よいですか?」
とか聞かれると思います。
そして、派遣先の会社の派遣社員を採用(本当は「採用」という言葉もNGなのですが…)する権限のある人と、派遣会社の営業マンも同席して、面接(面談)すると思います。
あれが、いわゆる、派遣社員の「面接(面談)」です。
2.「面接(面談)」をすることは、いわゆる「特定行為」に該当するため、本来NGです。
■「面接(面談)」をすることは、いわゆる「特定行為」に該当するため、本来NGです。
ほとんどの方はご存知ですが、「面接(面談)」をすることは、いわゆる「特定行為」に該当するため、本来NGです。
■一応確認。いわゆる「特定行為」とは?
この点もほぼ皆様はご存知かと思いますが、いわゆる「特定行為」派遣先が派遣社員を選ぶ(特定する)ことを、「目的」とする行為をいいます。
少し注意が必要なのは、「特定行為」そのものではなくて、「特定することを目的とする行為」がNGなのです。
しかもさらに少し面倒くさいのは、法律上はこの特定行為がNG(違法)となっているわけではないのです。
派遣に関するルールは派遣法に記載されていますが、これが「特定行為」を禁止している部分です。
以下に派遣法第26条第6項を引用しますので、赤い文字のところだけ読んでください。
(派遣法 第26条第6項)
(契約の内容等)
第二十六条
1 (略します)
2 (略します)
3 (略します)
4 (略します)
5 (略します)
6 労働者派遣(紹介予定派遣を除く。)の役務の提供を受けようとする者は、労働者派遣契約の締結に際し、当該労働者派遣契約に基づく労働者派遣に係る派遣労働者を特定することを目的とする行為をしないように努めなければならない。
ポイントは次の2つです。
①規制されている行為は、「派遣労働者を特定することを目的とする行為」であること
②規制といっても、「~してはならない」ではなくて、「~しないように努めなければならない」であること
です。
①の規制されている行為が、「派遣労働者を特定することを目的とする行為」であることですが、これは、今回はあまり気にしなくて大丈夫なので、細かい説明は省略しますが、要は
「特定するために行っている行為であれば、特定そのものでなくてもダメですよ」ということです。
そのため、履歴書の要求もダメです。
次に、②の規制が、「~してはならない」ではなくて、「~しないように努めなければならない」であることについて次の段落で説明させて頂きます。
3.「面接(面談)」は、いわゆる「特定行為」に該当するのですが、厳密には違法ではないです。
さて、タイトルの通り、「面接(面談)」は、いわゆる「特定行為」に該当するのですが、厳密には違法ではないです。
それは、法律の要求が、「~しないように努めなければならない」のためです。
文字の通りなのですが、これは、要は「~しないように頑張ってください」くらいの意味しかないのです。
そのため、
厳密には特定行為は違法ではない
です。
そのため、
仮に特定行為である「面接(面談)」をされたからといって、損害賠償を請求してお金を勝ち取ることや、派遣会社や派遣先が罰金を払わなくてはならないようなことにはなりません。
しかし、行政指導の対象にはなりますし、法律上の価値観には反していることになりますので、よくないことには間違いないです。
ちなみに、「面接(面談)」をはじめとした特定行為が望ましくないと考えられている理由は、
①誰をどこに派遣するのか?という判断は、派遣会社の労働者である派遣社員を、どこで働かせるのか(つまりどこを勤務先とするのか)を決めることであり、雇主である派遣先が決めることであるため。
②「面接(面談)」等の特定行為を認めると、能力以外の要素(特に外見とか)で派遣社員の採用が決まる恐れがあり、人格を否定することや、就業する機会を不当に狭くされてしまう恐れがあるから
と考えられています。
4.「面接(面談)」はNGだが、絶対に応じた方がいいです。
さて、派遣社員対する「面接(面談)」はNGです(損害賠償を請求しても多分負けてしまいますが…)。
しかし、「面接(面談)」には絶対に応じた方がいいです。
理由は次の4つです。
①正社員やバイトでも面接(面談)はほぼ100%行うため、「面接(面談)」の練習は本当に大事で、ただで練習できるのは得だから。
(私も転職活動をするときは、落ちてもいい会社にどんどん応募して面接の練習をしました。)
②どんなに「『面接(面談)』はNGだ!」といっても、「面接(面談)」をしないで採用する派遣会社はないため、
「面接(面談)」辞退=派遣先が見つからない
になってしまうため。
③面接(面談)にいかないと、派遣会社の印象が悪くなる恐れがあるため。
正直、派遣会社の担当者からすると、クレームや文句を言わず、派遣先ともめないで働いてくれる派遣社員を求めています。
「仮に、派遣会社の言っていることが、法律上ダメであっても(少し極端ですが)」です。
特に、「面接(面談)」は、本来NGですが、違法なわけではなく、しかもおそらく世の中からなくなりません。
しかも、「面接(面談)」をしないと派遣先が他社の派遣会社を採用してしまうおそれが高いです。
そのため、「面接(面談)」に応じてくれない派遣社員の派遣先を見つけることはほぼ不可能です。
これは、派遣会社に文句を言っても仕方ないですし、派遣会社からすると派遣先には逆らえないので、見逃してあげるしかないと思います。
④派遣先の上司とうまくいかないとすぐ辞めたくなるため。
最後に派遣先の上司とうまくいかないと、すぐ辞めたくなると思います。
現実問題として、いつ契約が終了するかわからないことが多いですし、もっといいお仕事が見つかったらそちらに移動してよいと思うのですが、
すぐに辞めてしまうと経歴に傷がつきます。
そうすると、今後のお仕事が見つかりにくくなります。
また、生活のお金にも困ると思います。
また、ある程度勉強して派遣のルールを知ってから「面接(面談)」に行くと、
「この人は派遣のルールわかってないな。行くのやめるか、つなぎで短い期間だけ働くか…」
等の作戦を考えることができます。
そのため、少なくとも、派遣先の上司は見ておいた方がいいです。
また、派遣先が遠い場合は、交通費もらえないか相談してみましょう。
ダメもとですが、少し相談するのはありです。
相談のときの聞き方ですが
「ちょうどそのあたりで別の派遣先を紹介してもらってるんですよー。そちらも魅力的なので、ちょっと迷ってます。」
のように頭出しして、
「ちなみに交通費は頂けないですよねー。ちょっと最近出費が多くて…。」的な感じがいいと思います。
少しそれますが、派遣会社との交渉は、
①お仕事を紹介してもらえるくらいの「人柄」と「スキル」があること
②お金の交渉は、単にお金が欲しい(みんなそうなので、現実はこれが理由でよいのですが)といった感じではなく、「お金が必要な理由がある(けど本当に困っている感じだと足元見らえるのでダメ)」
的な感じにするのがよいです。
※スキルも大事ですが、ほとんどの派遣社員の方は「人柄」で落ちてしまっていますので、清潔感・素直さ・責任感・事務的なスキル、があればお仕事をもらっている方が多いです。
5.まとめ
さて、最後にまとめです。
■今回のまとめ
②「面接(面談)」にはできるだけ行った方がいい。
③「面接(面談)」のときの交通費がバカにならない可能性があるので、交渉する。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
S新一