お疲れ様です。
大手人材サービス会社で法務をやっている新一です。
今日は、派遣社員が妊娠した場合派遣就業を継続することができるのか?
もし派遣就業を断られた場合、何か法的に主張することができるのか?という点についてまとめさせて頂きます。
派遣就業を継続することができるかどうかで育休を取得することができるかにかかわってきますので、しっかり読んでおいてください。
目次です。
1.妊娠していることを派遣先に伝えた場合どうなるのか?
本来、妊娠はおめでたいことです。
しかし、派遣先にとっては、「妊娠によりいつお休みされるかわからない、せっかく教えても数か月後に育児休業に入ってしまう派遣労働者は避けたい」と思うのが一般的です。
もし自分が派遣を利用する場合であっても同じことを考えると思います。
実際、派遣社員が妊娠したことを派遣先に伝えた場合、多くの会社では派遣社員の交替を求めてきます。
派遣社員からしたらお給料をもらえなくなってしまいますし、もう少し長く働いていれば育休を取得することができたので、とてもショックを受けることだと思います。
また、そもそも妊娠・育休を理由に働くことを拒否することはマタハラなのではないか?という問題もあります。女性の人権に対する意識としてどうなの?と思う方もいらっしゃると思います。
この記事では実際に自分がかかわったことのある案件についても少しずつ触れながら、妊娠に関する派遣社員の権利について書いていきます。
また、結婚・妊娠を理由として不利益な取り扱いをすることを禁止することや、セクハラを禁止する法律は、「男女雇用機会均等法」という法律ですので、検索する際には知っておくと役立ちます。
2.派遣先は妊娠を理由に派遣契約を解除または更新拒否することはできるか?
(1)派遣先は妊娠を理由に派遣契約を解除することはできません。
まず、派遣先は妊娠を理由に派遣契約を解除することはできません。
その理由は、そもそも契約を解除するためには何かしらの理由が必要なのですが(例えば、契約違反等)が、派遣スタッフが妊娠したことは契約を解除することができる理由にはならないからです。
これは、男女雇用機会均等法関係なく、法律上当然のことです。
法律上当然ですし、今のところ法改正を検討するほどの問題はないようで、あえて法律に書いておくことはしてません。
実際には契約違反や法律違反がなくても契約の解除を要求されることがありますが、それらは応じる必要のないものです。
なお、男女雇用機会均等法の第9条第2項に「事業主は、女性労働者が婚姻したことを理由として、解雇してはならない。」という規定があり、かつ男女雇用機会均等法は派遣先にも適用されるというリーフレットが厚生労働省から出ておりますが、ここでいう「解雇」は雇い主しかできませんので、派遣先が派遣契約を解除することができないことは男女雇用機会均等法によって禁止されているからではありません。
■男女雇用機会均等法第9条
(2)派遣先は妊娠を理由に派遣契約の更新を拒否することはできる!(表には出さないと思いますけど。。)
次に、問題となるのが、派遣先が派遣社員の妊娠を理由に派遣規約の更新を拒否することができるか?という点です。
結論からいいますと、できます。
※実際には、妊娠を理由としていることは、表には出さないと思います。
なぜ契約を更新しないことが許されるかというと、派遣契約を更新するかどうかは商取引の話であって、ようは「どこの会社に外注するか?」という話だからです。さらに派遣契約を更新しないことについて理由はいりません。
したがって、派遣先は、派遣社員が妊娠したことを理由として契約更新を拒むことはできます。
しかし、理由を説明する必要はがないですしトラブルのもとですので、仮にスタッフの妊娠が理由であった場合でも、「派遣社員が妊娠をしたので御社(派遣会社)との契約更新を拒否します」、とは言わないでしょう。
ここでよく下のような質問を受けることがありますので、書いておきます。
(3)派遣社員が妊娠をしたことを理由として派遣契約を更新しないことは、妊娠を理由とした不利益取扱いに当たらない。
派遣社員が妊娠をしたことを理由として、派遣契約を更新しないことは、残念ながら「妊娠を理由とした不利益な取り扱い」には該当しません。
なぜなら、派遣契約では特定行為が禁止されており、派遣契約と派遣社員の就業は切り離されているためです。
実際には、登録型の派遣社員というのは、派遣契約が前提となっているため、派遣先がなくなってしまった場合(派遣契約が解除されるか、派遣契約が更新されない場合)には、派遣会社との契約も更新されないことになります。
それでも、法律上は、派遣契約の存在と派遣社員の就業は別ものなので、派遣社員が妊娠したことを理由として派遣契約の更新が拒否されることは男女雇用機会均等法に違反しません。
ただし、派遣先では社員が妊娠をしても最後まで勤務させていることが一般的ですので、派遣社員だけ派遣契約を終了させるという方法で交代させるのはひどいです。
そこで、派遣社員の方が取れる方法を4にまとめました。
3.派遣会社は、妊娠を理由に雇用契約を解除または更新拒否することはできるか?
(1)派遣会社は、妊娠を理由に派遣スタッフを解雇することはできるか?
当然ながら、妊娠を理由に雇用契約を解雇することはできません(男女雇用機会均等法第9条第4項本文)
(2)派遣会社は、妊娠を理由に雇用契約の更新を拒否することはできるか?
これも当然ながら、できません。
期間が決まっている雇用契約は、原則として期間終了後に雇用契約を更新する義務はありません。もっとも、労働契約法第19条によって、一定の場合に雇用契約を更新しないことが無効となる場合があります。
さらに、男女雇用機会均等法は、妊娠を理由とした不利益な取り扱いを禁止しております(同法第9条3項)。そして、雇用契約の更新をしないことは、不利益な取り扱いに該当します。
したがって、雇用契約を更新しないことは、それが妊娠が理由であれば違法となります。
4.雇用契約を更新してもらう方法
契約更新してもらう方法:派遣会社に相談する。
派遣会社から、派遣先に契約更新をお願いしてもらうのです。
3でも書きましたが、派遣会社は妊娠を理由として派遣社員を雇止めすることはできません。
したがって、派遣先との派遣契約が更新されている場合、別の妊娠していない派遣社員を代わりに派遣することはできません。
また、派遣先も派遣契約を更新した場合は、妊娠していることを理由として別の派遣社員に交代するように派遣会社に求めることもできません。これをすると、「派遣労働者として就業する者について、派遣先が当該派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を拒むこと」に該当して違法です。
・こちらのリーフレットを読んでください。
↓
「ご存知ですか?派遣先にも男女雇用機会均等法や育児・介護休業法が適用されます。」
そこで、派遣契約が更新されるように派遣会社に相談するのです。
このときのポイントは、
①派遣先に気に入ってもらえること
②派遣会社の営業担当やその上司に気に入ってもらうこと
です。
派遣先からの評価が高い派遣社員は、派遣会社から大事にされます。
そして、派遣契約が更新される可能性が高いです。
また、要は雇用契約が更新されればよいので(派遣社員としてでなくてもよい)、次の方法も有効です。
※派遣会社の営業担当が以下の方法を思いつくかわからないので、こちら側から提案した方がよいです。
①就業時間を少なくしてもいいから延長して派遣契約を延長してもらうこと
②派遣会社でアルバイトさせてもらう
③業務委託の業務を行う社員(契約社員になることが多いです)
また、実際労働局も大手の派遣会社の方の指導を強くする傾向にあります。
また、大手は法令を遵守しますし、法令を守るのに必要な資金に余裕もあります。そのため、産休の取りやすさでいうと大手の派遣会社の方がおすすめです。
☞新一おすすめの派遣会社まとめ
また、派遣は派遣先の意向によって今後お仕事ができるかどうかが左右されてしまいますが、アルバイトであれば長期の休みをとることもできます。その点では、派遣よりもアルバイトの方がおすすめです。
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