お疲れ様です。
大手派遣会社で法務に所属している新一です。
毎年、派遣契約の終了が多くなる季節(3月末、6月末、9月末、12月末)に、派遣社員の方から失業保険についてお問い合わせをいただきます。
今日は派遣社員が派遣契約が満了(終了)したあとの失業保険のもらい方と、失業保険をもらうときに自己都合による契約終了か、会社都合による契約終了か、を区別する方法を書いて行きます。
目次をつくったので、気になるところから読んでください。
1.失業保険とは?
(1).失業保険は、雇用保険という保険に加入しているともらえるお金のことです。
失業保険とは、雇用保険という保険に加入しているともらえるお金の1つで、雇用契約(労働契約)が終了してしまったときに、その後の生活を守るために支給される保険のことです。
派遣社員の方が利用するのは、派遣雇用契約が終了した場合に、次の派遣先が見つかるまでタイムラグがある場合に申請を考える、というのがほとんどだと思います。
なお、たまに派遣会社が失業保険の認定をすると誤解されている方がいらっしゃいますが、失業保険の窓口は、ハローワークです。
ですので、失業保険に関する質問を派遣会社にしても、派遣会社がわかることには限りがありますので、その点は覚えておくとよいと思います。
※ただし、派遣会社には、派遣社員の失業保険に対応する部署がありますので、「一般的には」というレベルの質問であれば回答できます。
(しかし、失業保険の手続き(支給されるかどうか、会社都合か自己都合か)についての判断をすることはできません)
(2).もっと細かく失業保険について知りたい派遣社員の方へ
実は失業保険についてしっかり知ろうとすると結構めんどくさいです。
なぜかというと、失業保険は、雇用保険に加入しているともらえるお金の1つなのですが、雇用保険は社会保険の1つで、社会保険には色々なものがあるからです。つまり、社会保険というのは、色々な公的な保険を、全部ひっくるめて呼んでいるのです。
失業保険を含めた社会保険を表にすると、このようになります。
↓
大 | 中 | 小 | もらえるお金 |
(広い意味での)社会保険
①狭い意味での社会保険 | ①(狭い意味での)社会保険 | 健康保険 | (省略) |
介護保険 | (省略) | ||
厚生年金保険 | (省略) | ||
②労働保険 | 労災保険 | (省略) | |
雇用保険 | 失業保険、育児休業時の手当て等 | ||
③会社員(派遣含む)以外の人が入る保険(自営業、学生等) | 国民健康保険 | (省略) | |
国民年金 | (省略) |
このように、失業保険とは、世の中で「社会保険の料金があがって給料下がったー!」という会話がされているときの「社会保険」としてもらえるお金の1つなのです。
これは、「野球」というのは、「球技」の1つであるのと同じように、
「失業保険」(雇用保険の中の1つの手当てです)が、「社会保険」の1つである、ということです。
☆文章ではわかりにくいと思いますので、もし疑問点があれば、コメントでご質問頂けると嬉しいです。
(3).「失業保険をもらうための雇用保険に、自分は加入しているのか?」を確認する方法。
では、次に「失業保険をもらうための雇用保険に、自分は加入しているのか?」を確認する方法を説明させて頂きます。
これは、就業条件明示書(派遣会社の営業さんは「雇用契約書」と呼んでいることが多いです)に、社会保険(雇用保険、厚生年金保険、健康保険)の加入手続きがされていない場合には、その理由を記載することが必要なので、理由が書かれていない場合には加入していることになります。
また、就業条件明示書がどっかにいってしまった場合でも派遣会社に聞けばわかります。
なぜかというと、失業保険をもらえるための要件を満たしている場合は、派遣会社が雇用保険に加入させる必要があるため、社内で情報は控えているからです。
ただし、派遣会社の営業さんがすべて覚えているわけではないと思うので、大きい会社では2、3日は確認に時間がかかると思います。
(4).失業保険をもらえる要件について
次に、失業保険は、雇用保険に加入しているともらえるお金なので、雇用保険に加入する条件を書いていきます。
雇用保険に加入する条件ですが、次の例外にあたらない限り、雇用保険に加入していることになります。
例外①:1週間の所定労働時間が20時間未満の場合
例外②:派遣会社に継続して31日以上雇用されることが見込まれないこと
(例えば派遣契約が30日以下の場合)
例外③:季節労働者で契約期間が4か月以内の人や、季節労働者で1週間の所定労働時間が30時間未満の人
例外④:船員で雇用契約の期間が1年未満の人
例外⑤公務員
派遣社員の場合は、あり得るのは上の①と②です。
ということは、
①就業条件明示書に書いてある週の派遣就業の時間が、20時間以上
②派遣雇用契約の期間が31日以上
の場合は、雇用保険に加入していることになりますので、契約が終了したときは、失業手当がもらえる可能性があります。
正確には、雇用保険に加入しており、さらに次の条件を満たすと失業保険がもらえます。
つまり
①前提として、雇用保険に加入している
②雇用保険に加入していることを前提として、失業保険をもらる条件を満たしている
というステップになります。
では、失業保険をもらえる条件とはなんでしょうか。
それは、
①派遣会社が「資格喪失届」を提出していること
②失業状態にあること
③離職の日以前の2年間で、雇用保険に加入していた期間が通算して12か月あること
の3つです。
ただし、いわゆる会社都合退職の場合は、③の「12か月」は、「6か月」でよいです。
となると、自分の都合で派遣会社を辞める場合は1年間働いてから辞めましょう。
(5).ハローワークに失業保険をもらいに行くための手続き
さて、(4)で説明させて頂いたように、
①派遣会社が「資格喪失届」を提出していること
②失業状態にあること
③離職の日以前の2年間で、雇用保険に加入していた期間が通算して12か月あること
という条件を満たしていれば失業保険をもらうことができます。
では、どこに、何を提出すれば失業保険をもらうことが出来るのでしょうか?
これは、離職票をもって、ハローワークにいって手続きをすることで失業保険をもらうことができます。離職票は派遣会社ではなっく、ハローワークからもらいます。
具体的には次のような手順です。
①退職(期間満了後、派遣会社から新しい派遣先の紹介がない場合や、派遣会社に解雇された場合)
↓
②派遣会社に、失業保険をもらいたいから、資格喪失届と離職証明書(離職票と似てますが一応別のものです)をハローワークに提出してほしい、と伝えます。
↓
③派遣会社が、ハローワークに資格喪失届と離職証明書を提出します。
※注意は、退職すれば勝手に派遣会社が、資格喪失届と離職証明書をハローワークに提出してくれるわけではないので、失業保険をもらうためには自分で派遣会社に言わないといけない、ということです。
↓
④離職票がハローワークから送られてくる
↓
⑤離職票をもってハローワークに行き、求職の申し込みをする。同時に失業保険の申請もする。
※このHPが分かりやすいです
⇒「基本手当とは…」(ハローワークインターネットサービス)
↓
⑥ハローワークから、失業保険の需給資格者証が届く。そして、失業の認定日が通知される。
↓
⑦失業の認定日にハローワークに行く
・受給資格者証を提出する
↓
⑧失業の認定と失業保険を支給される
2.失業保険のお問い合わせはハローワークへ。
(1).失業保険は誰(派遣会社?国?)が行っているのか?⇒国です
失業保険はけっこうめんどくさいという点はお分かり頂けたと思います。
そのため、申請をしようとして分からなくなったときに確認する必要があります。
しかも、派遣会社に聞いてみても、はっきり失業保険について回答がもらえることは多くないです。
なぜでしょうか?
上で書かせて頂きましたように、失業保険は社会保険の1つです。
そして、社会保険とは、国が行っている保険の1つです。
そのため、派遣会社に問い合わせをしても、派遣会社が行っているわけではないので、派遣会社は回答することができません。
したがって、もし派遣契約の更新がされなかった場合には、派遣会社に相談すると同時にハローワークにも相談しましょう。
もっとも、皆様が気にされるのは、失業保険を受けるときに、自己都合なのか・派遣会社都合なのか、という点だと思います。
なぜかというと、いわゆる自己都合の場合と派遣会社都合の場合とで、失業保険を受け取るまでの期間や、失業保険を受け取ることのできる期間が変わってくるためです。
(2)どんな場合が会社都合による退職なのか?
この点は最終的にはハローワークが判断するのですが、一般的には次にようなことが言えます。
1).派遣会社都合の退職となる場合
派遣会社都合の退職とは、派遣会社の倒産、派遣会社に解雇された場合です。例えば次のようなことがあります。
①まず、派遣会社の倒産の場合
②また、当然派遣先が見つからず、派遣会社から解雇された場合も派遣会社の都合による失業です。
③次に、派遣の契約期間の満了後、次の派遣のお仕事を探しているのに、派遣会社が派遣先を見つけることができず、更新してもらえなかった場合も派遣会社の都合となります。
※さらに、「正当な理由による自己都合退職(会社の意思による契約終了ではいためです)」といいまして、派遣会社からもらった就業条件明示書に記載されている「業務内容」と、実際の業務内容が著しく異なっていた場合は、雇用保険に加入している期間が6か月でも、失業手当をもらうことができます。
2)自己都合退職の場合
①「仕事が嫌になったから辞めたい」という場合は、自己都合退職となります。
②また派遣会社に、条件に合う仕事を紹介されたが、自分の都合で断った場合も自己都合となります。
ただし、最終的に判断するのはハローワークですので、まず国(ハローワーク)に相談するのがベストです。
派遣会社の営業担当に、失業保険の支給について回答する権限はないので(国が管轄ですので)、派遣会社の営業に聞いても、わからないことはわかりません。
回答を待っている間にも契約満了日は迫ってきます。
質問先を間違っている場合、相手もわかりませんので、時間をロスすることになってしまいます。
この点はご注意ください。
3.派遣会社都合の退職にしてほしいからと言って、離職票に「派遣会社都合による退職である」と書くことはできません。
最後に、たまに受ける相談なのですが、事実と関係なく、離職票に、「派遣会社の都合による退職」である旨を書くことはできません。
もしこのようなことをして、失業保険をもらった場合、国を相手とした詐欺罪が成立するおそれがありますので、絶対にやめてください。
・社労士事務所のHPですが、このような記事があります。
↓
従業員の退職理由の書き方で詐欺罪になることも
また、不正支給となると、支給を受けた分を返金するよう、国に請求されます。
※国の請求はけっこうえげつないので、不正は止めてください。
ハローワークのHPにこのような記載があります
↓
「不正行為が行われた場合、その不正行為があった日以降の日について、基本手当等が一切支給されず、不正に受給した基本手当等の相当額(不正受給金額)の返還が命ぜられます。さらに、返還が命ぜられた不正受給金額とは別に、直接不正の行為により支給を受けた額の2倍に相当する額以下の金額の納付(いわゆる「3倍返し」)が命ぜられることとなります。」
(「不正受給の典型例」より)
したがって、安定所に提出する書類には事実をありのままに記入し、不正に雇用保険を受給することのないようにしてください。
読んで頂きありがとうございました。
【こちらの記事もいかがですか?】
☞絶対に登録するべき!新一おすすめの派遣会社まとめ